マンガの無料公開とか電子出版とか

いつ本格自炊生活に突入しようかというみんですから、これから購入する本についても、可能であれば電子書籍で、と思うのも自然な流れです。

特にコミック系は、最近では絶版モノなども電子書籍販売されるようになって、中古でコレクター価格と化した高いものを探さなくても良くなり、スペースも取らないし、より傾倒の度合いを高めております。

そんな折に発見した、このニュース。

 「いや〜、何だか業界がひっくり返りそうな気がしてきたぞ(笑)」――「ラブひな」などで知られる人気漫画家の赤松健さんが、絶版漫画を無料配信し、広告収益を作者に還元するビジネスに乗り出す。専用サイト「Jコミ」を11月26日にオープン。まずは実験として「ラブひな」全巻(1〜14巻)を無料公開し、広告のクリック数などを検証する。

 このほど、ブログで計画を発表。新会社「Jコミ」を設立、社長に就任した。

 Jコミは“絶版マンガの図書館”。スキャンされた漫画を一般ユーザーから収集し、作者の許諾を得て広告を挿入した上で、DRMフリーのPDFファイルとして無料公開、広告収益を作者に還元する。絶版漫画に限定しているため「既存の出版社とは競合しない」している。


うわー、「ラブひな」無料公開ですか!いや、私は全巻持ってるんですが(笑)、この内容だと今は絶版なのかしらね。

ラブひな(9) (講談社コミックス)

ラブひな(9) (講談社コミックス)

でも、これってなかなか良いアイディアではないかな。広告じゃまだけど、確かにアニメの番組と同じ構成と言われれば、それほど抵抗も感じなくなる不思議。


無料公開と言えば、有名なのが佐藤秀峰氏の「漫画onWeb」。正確には有料コンテンツを公開しつつ、「海猿」や「ブラックジャックによろしく」が無料公開されてます。

佐藤氏のやり方については、同業者、業界関係者からの非難も多い。ググるとすぐ出てきます。こんなのとか

それぞれの立場で言いたい事はあるんだろうけど、確実だと思うのは、今は出版業界が電子化へ向かう過渡期で、メジャー・マイナー・個人に関わらず、すべての関係者が、来るべき新しいモデルを模索中であり、まだ正解など誰にも分かっていないという事。

この様な状況の中で、それぞれの動機は違うかもしれないけれど、佐藤氏や赤松氏のようなアプローチが出てくるのは当然だと思う。マンガでなければ、村上龍氏の個人出版社立ち上げも、最近の大きなニュースでした。


そもそもG2010という会社を作ることにしたのは、大きく2つの理由があります。1つは電子化の作業コストを透明化して売り上げ配分に関する公平なモデルを示したいこと、もう1つは、電子書籍を巡る状況と、さまざまな利害関係者の思惑をポジティブなものに変えたいからです。

現状では、電子化を巡って、今あるパイ(作品)をどう分け合うのか、あるいは編集者、出版社、書店は生き残れるのかというようなネガティブな議論になりがちです。出版社、著者、書店、印刷所、取り次ぎなどの利害関係者が、ともすれば疑心暗鬼に陥るシーンも見受けられます。しかし、もっと積極的に、そして開放的になるべきだと、わたしは思います。現に、『歌うクジラ』の電子化は、わたしにとって心躍るイベントでした。グリオの若いデザイナー、プログラマー、アーティストたちとのコンテンツ制作は、時間を忘れるほど楽しかったのです。とくに、坂本龍一のオリジナル音楽が到着したときは、「小説のための音楽というのは歴史上なかった」という深い感慨がありました。そんな感慨を持ったのは、もちろん初めてでした。

電子書籍は、グーテンベルク以来の文字文化の革命であり、大きな可能性を持つフロンティアです。電子書籍の波を黒船にたとえて既得権益に閉じこもったりせずに、さまざまな利害関係者がともに積極的に関与し、読者に対し、紙書籍では不可能な付加価値の高い作品を提供することを目指したほうが合理的であり、出版、ひいては経済の活性化につながると考えます。


いやもう、ホントにこんな具合にみんながポジティブに考えてくれれば、どんなに良いことだろうか。つまらない囲い込みとかに時間と労力を使うより、初めからオープンなモデルを展開する方が、より早く幸せになれる選択なのではないかな。

目先の権益調整に気を取られて、気が付いたら、また海外のモデルに美味しいとこ取りされて、国内勢は後手後手でジリ貧、なんて展開は見たくないよ。


さて、そんなこんなも含めて、マンガの配信形態ですが、まさに過渡期らしく、販売モデルもいろいろ。ざっと経験したもので、これだけあるよ。

コンテンツ売り切り型
パピレスなど、昔からあるやり方。日本ではまだだけど、amazonでも。データ買取後にダウンロードして自由に閲覧できる。ただし価格は高めな事が多い。紙媒体の8割ぐらい?
期間限定販売型1
漫画onWebなど、366日など長めの閲覧期間を持つ期間限定発売。価格は安め。1話10〜30円等。「海猿」「ブラよろ」など、広告としての無料コンテンツがあることも。
期間限定販売型2(貸本感覚)
貸本感覚の閲覧期間を持つ期間限定発売。パピレス電子貸本Renta!は48時間閲覧可能で、単行本など100円から。
広告併用無料型
上で紹介したJコミなど、書籍データ内に広告を入れて無料化。


これ以外に、どんなフォーマットでデータを入手できるかと云うのにも色々ある。ざっと思いつくのは、

  • フリーPDF、テキスト
  • DRMなどのキー付PDF
  • 専用ビューワーのみで閲覧可能ファイル
  • クラウド上でのみ閲覧可能ファイル

この辺が組み合わさって、いろんなサービスが出回ってます。個人的には、買い切りで自由に扱えるファイルと、貸本感覚で安く気楽に読めるものがお気に入り。


ただ、現在では、それぞれのサービスが持つコンテンツがバラバラで、コンテンツの内容によって、そのサービスが適していない事もあるという問題があるです。

例えば、ずっと手元に置いておきたいのに、貸本サービスでしか提供されてない場合。私の最近のケースだと、「それでも町は廻っている石黒正数)」が電子貸本Renta!で読めるのだけど、いざ読んでみると、「とても2日でリリースする気になれん!くっそー、場所とるけど全7巻買う!」てな流れになりつつあり。この省スペース奨励の波に逆らって。もちろんその逆の、さらっと読みたいだけなのに、もっと安くしてよ...ってケースもある。

それでも町は廻っている 1 (ヤングキングコミックス)

それでも町は廻っている 1 (ヤングキングコミックス)

ゆくゆくは、それぞれのコンテンツで、購入オプションをニーズに合わせて選択できるようになれば一番。しかし、今の出版業界の混迷ぶりを目にするに、そこにたどり着くまでの道は長そうだ。