プリンセス・トヨトミ 東京では成立するか

万城目学三都物語シリーズ(?)、大阪が舞台の第三作「プリンセス・トヨトミ」が映画化されて、今年の5月に公開されます。

大阪で「トヨトミ」。そのものズバリで、単行本の表紙は、大阪城天守閣を見上げる登場人物たち、です。

プリンセス・トヨトミ

プリンセス・トヨトミ

この本を読んで、ちょっと唸ったのは、この話が単なる荒唐無稽な絵空事ではない、ひょっとしたら?と思わせるような説得力をも持っているのではないかと思わせたから。

ストーリー自体は、ネタバレになるので触れませんが、現代の、大勢の大阪人が「豊臣家への、ある想い」を持って、大阪城に集結するというシーンがあります。

大阪人だけが知っている、代々受け継がれてきた秘密の指令。なんだか、そんなモノがあってもおかしくないと思わせる、大阪ならではの妙なリアリティ。


例えば、これ、江戸っ子に当てはめて、プロットを想像できるだろうか?現代の東京人が、「徳川家への、ある想い」を持って、江戸城に集結する。

ないなー(笑)。

徳川将軍家への想い。将軍様のお膝元を謳ったものの、大阪人の太閤さんへの思い入れ程の肩入れって、現代の東京人にはないでしょう。私自身が東京生まれなのに、徳川家への愛着って全くない、というか、そんな発想自体、持った事すらなかった。

幕末明治の頃の江戸人には、「徳川様」への想いがあったのかもだけど。天領の多摩住民、近藤勇のような人達。

一つには、現代の東京人と大阪人の構成要素の違いもあろうかと。単なるイメージですが、代々の住民の密度は、東京よりも大阪の方がずっと濃いように見える。


なんかうまく言えないけど、大阪人が、大阪とその歴史について持つ想いって、東京人の自分にはピンと来ないほど濃いのではなかろうか、濃そうに見える、という話です。

論より証拠、すごいなーと思ったのは、上記の大阪城集結シーンの撮影時の話。

「大阪中の男達が大阪城に集結する」という大掛かりなモブシーンのために、多数のエキストラを募集したら、希望者殺到だったそうですよ。作者のご尊父も奮って参加されたそうです。すごいよ大阪人。

という訳で、作者の万城目氏が東京出身だったとしても、東京が舞台の「プリンセス・トクガワ」は成立しないんだろうなあ、と。逆に、誰(何)だったら成立するのか。そんな存在あるかな?東京。


ところで。

読んだのがけっこう前で、作品中ではっきり明言してあったかどうか記憶がないのだけど、「秀吉の大坂城が、現在の大阪城の地下に埋まっているという事実」から勘案したと思われる設定など、城マニアとしては、シビレるところを突かれた気がしたものです。

プリンセス・トヨトミ」、噂のモブシーンが楽しみです。絶対劇場に観に行くぞ。