大相撲の八百長疑惑で世間は大騒ぎ(らしい)ですが、特に相撲に興味のないみんは、ふーんといった感じで傍観してます。
ところが、今朝の「とくダネ!」で、笠井アナが「相撲の八百長についてアメリカの経済学者が言及したことがある(大意)」と語り、のんびり構えていたみんも、ハッとしたのでした。
その本は「ヤバい経済学」。当時話題になった本で、みんも読みましたよ。「悪ガキ教授が 世の裏側を探検する」という副題の通り、現代社会で起こっている事には、すべて経済的なウラがあるのだという事を、パンクなテーマと手法で書いた本。
- 作者: スティーヴン・レヴィット,スティーヴン・ダブナー,望月衛
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2006/04/28
- メディア: 単行本
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この本で取り上げられているアンダーグラウンド的トピックの一つが、相撲の八百長問題。
日本国では、相撲はただのスポーツではなく精神的にも重要なものなのだ、としながら、データを並べながら、ある種の取り組み結果に何らかの作為があるとしか思えないと語る。
データは、1989年1月から2000年1月までの、上位力士のほとんどすべての取り組み結果。281人の力士による、3万2000番の勝敗。
ここで著者は、力士のインセンティブとして、トップ66人(幕内と十両)に居る者とその下に居る者との、収入や待遇などあらゆる面での決定的な差について説明する。貴族と奴隷のように違う。
年に6回開かれる本場所。15日間毎日1番ずつ相撲を取る。8勝以上で勝ち越せば番付があがる。負け越せば下がる。などと相撲のシステム的なことも説明される。
相撲に興味のないみんも、何も知らないアメリカ人と同じように、なるほど、そういう事になっているのかと、改めて知るという(笑)。それにしてもこのセンセイ、ずいぶん相撲に詳しいなあと感心。
ここで著者が問題にするのが、千秋楽における、7勝7敗力士と8勝6敗力士との取り組み結果。
- 7-7力士の8-6力士に対する期待勝率:48.7%
- 7-7力士の8-6力士に対する実際の勝率:79.6%
- 7-7力士の9-5力士に対する期待勝率:47.2%
- 7-7力士の9-5力士に対する実際の勝率:73.4%
その時点で勝ち星の多い相手は、自分より強い相手である可能性があるため、勝ち予想は5割を切っているのに、実際の勝率は約8割!土壇場の勝負強さでしょうか。
そして、この組み合わせが、次の場所で「どちらも7-7でない場合」どのような結果になるか。
データから実際に計算してみると、前回7勝7敗だった力士は再戦ではたったの40%しか勝っていないことが分かる。あるときは80%でその次は40%?いったいなんで?
一番理屈にあう説明は、力士達の間で取引が成立している、というものだ:今日はどうしても勝ちたいんで、オレに勝たせてくれたら次回はお前に勝たせてやるよ(そういうやり取りに加えてお金も絡むかもしれない)。とくに面白いのは、2人の力士が次の次に当たった時には、勝率は期待どおりの約50%に戻っている事だ。星の貸し借りはどうやら次の対戦までらしい。
「ヤバい経済学」 p48-49
相撲社会が一般社会に対して、どのような態度を取っているかと云う話も面白い。
著者は、相撲と八百長という文字の組み合わせだけで、国民あげての大騒ぎになるけれど、相撲協会の経営者たちはそういう疑いの声を、逆恨みした元力士のでっち上げと言って済ましてしまう、と説明する。
それでも八百長疑惑でマスコミが注目している時がある。
で、そんなときはどうなっているか?データによれば、八百長報道のすぐ後に開かれた本場所では、7勝7敗で千秋楽を迎えた力士の、8勝6敗の力士に対する勝率はいつもの80%ではなくただの50%だ。データをどういじっても出てくる答えはいつも同じだ:相撲に八百長なんかないとはとても言い切れない。
「ヤバい経済学」 p49-50
八百長はある!と、ほぼ断言してますけど。ただ、この本を読んだころ、このトピックってほとんど流されていたような気がするんですが。
さらにこの後、相撲界の不正を暴露した元力士2人が、外国メディアへの記者会見直前に、2人とも不審死したというエピソードまで紹介されてます。
結局、日本人がそれまで白黒つけることが出来なかった問題を、何年も前に、外国の本で先に指摘されちゃったって感じでしょうか。
しかし、消したケータイメールをサルベージして発覚って、いつぞやの民主党偽メール事件の頃から比べると、国民のITリテラシーも上がらざるを得ない時代ですねえ。