庶民の味方、質屋

若い人は、あまり使ったことはないかもしれません。質屋。

いや、私の世代だって、とてもめずらしい。NHKのおめざめ番組「シャキーン!」にて、いまや作詞作曲でご活躍の鹿哲朗さんだけが、私以外で唯一知っている体験者ですよ(名指し)。

最近の朝ドラにはめずらしく、「ゲゲゲの女房」が人気ですが、水木サンが売れない時代は大いに質屋にお世話になってましたね。束になった質札投げつけて、脱税を疑う税務署員に「我々の生活の何がわかる!」と怒鳴りつけるシーンは印象的でした。

おいおい、そんなことして質札なくすなよーと思いましたが(笑)。


イマドキは、生活費レベルでお金を借りる必要があると、個人では、銀行やクレジットのカードローンか、消費者金融にお世話になるところでしょうか。

この方法だと、返済日までに、元金と利息を合わせた所定の返済金をきっちり支払う必要があります。猶予というモノがない。

または、古道具屋(?)にモノを売って現金化するという手もあるでしょう。しかし売ったモノは失われる。

質屋は、これらの点で融通の利く金融システムです。


基本的な仕組みは、1)質草となる何かを持ってゆき、2)担保相応の金額を借りる、と実にシンプル。

質草は3ヶ月のあいだ質屋で保管され、それまでに借金が返済されれば、持ち主に返却されます。

3ヶ月を超えると、どうなるか?借主に質草を請け出す意思がなければ、もしくは全額返済できなければ、そのまま質草は流れます。いわゆる質流れです。これはその質屋で直接売りに出されたり、質屋業界内で流通させ買い取られたり。

質草を流したくなければ?毎月決められた利子だけを支払い続ければ、その間質草は質屋でキープしてもらえます。借入額にもよりますが、2〜3万円程度なら7%ぐらい?金額が増えれば利率は下がります。


お金を借りた時に、質屋は質札を発行しますが、ここに上記の保管期限、貸出金額、一ヶ月の利子額、が記入されています。借金を返済する時、月々の利子を支払う時、質札が必要になります。

水木夫妻が、長い貧乏生活の後に大量の質草をまとめて請け出すことが出来たのは、質屋がこのようなシステムであったからです。

つまり、お金がないので質入して現金は作ったものの、その後質草を請け出す余裕はなく、しかし手放すわけにも行かないので、いつか受け出すことを期して、とりあえず利子だけ払い続けていた、という事です。


最近では質屋の金利の高さについて問題視する声もあるようですが、小口とはいえちょっとした家財道具類でお金を借りる事ができ、返済の支払い義務がない(いざとなれば質草が流れるだけ)事から、手軽で安心な金融システムと言えるんじゃないでしょうか。

ただ、私の印象だと、質草の査定額はかなりシブイです。お金を借りても、流してしまうと、逆に価値的には大損のような(笑)。

特に、実際の体験例ですが、電子楽器とか世の中に最近(当時)現れたモノは評価額が低い、というか評価軸がないので高い値段は付けられない。そんな場合は、購入価格の10分の1というのが目安だそうです。

質屋には、業界資料としての相場表みたいなものがあって、実際見せてもらった事がありますが、その中に当然だけど電子楽器というカテゴリーはありませんでした。管楽器とかギターとかはあったけど。

なので、質草として高評価されるためには、時代に左右されない、何か堅実な価値があると思われるものである事が重要。イマドキだと、PCとかもどんどん型落ちするので、価値低そう。

もっとも、借金しないで済む事が一番であることは言うまでもありません(笑)。