入れてやる、じゃなくて、来てください、じゃないの

日本の労働市場は魅力的ですか?

(読売新聞) 2010年7月9日(金)03:04

 EPA(経済連携協定)に基づきインドネシアとフィリピンから来日した外国人看護師・介護福祉士候補者の中途帰国が相次ぎ、受け入れが始まった2008年以降、計33人(今年7月1日現在)に上っていることがわかった。 日本の国家試験突破の難しさなどから、将来の展望が見いだせずに就労をあきらめた人が少なくないと見られる。

国内での看護師需要が膨らむ一方である今、人材を海外からも募集しよう、というのは悪くないと思うのだけど、しかし、今の日本って、日本語を覚えてまで行く魅力のある市場なのかな?

たとえば、フィリピン人なら、英語で世界中の、大体どこでも就労できる。現実にそのような地域では、就労先としての日本は極めて不人気。NHKのドキュメンタリーかなんかでやってたよ。そもそも看護師需要は世界中で増大中なのだ。

そんな中で、どうやって海外の労働力に日本に来てもらうか、という戦略がどうもみえない。

むしろ、来たいんだったら、日本語で試験に受かれば入れてあげてもいいよ、という上から目線になってるように見える。というか、実は海外からの労働力は日本に来て欲しくない?

大手町の入国管理局というところ

ところで、以前みんは某外資系企業でお仕事をしてましたが、20年ほど昔に、米国・日本・フィリピンの合同プロジェクトのお手伝いをしてました。拠点は東京とマニラで、マニラ・オフィスからも大勢のスタッフが来日してました。

当時のお仕事の一つに、来日したマニラスタッフの入国やビザ更新のサポートがあって、大手町の入国管理局には、それこそ何度も足を運びました。

まあとにかく大混雑で、えらく待たされるんですが、待たされる間そこで見たものは、声を荒げてアジア系申請者をどなりまくる役人の姿でした。欧米人には紳士的な態度なのに、アジア系となるとイキナリ豹変。

世界中の人が集まってる中でのあれは国辱モノだぜ、と友人に話したら、国家公務員のその友人は、アジア人は不法滞在になりがちで、あまり入れたくないから、ワザとやってるんだよ、という話をしてくれました。

が、ではしようがないとはまったく思わなかったですよ。だって傍からは、日本人は欧米人には腰が低いが、アジア人には威圧的、としか映らないもの。

自分達の番が来て、当事者のマニラスタッフと付き添いの私が窓口で申請するんですが、交渉はもっぱら日本語で私がやります。語学留学組ではないので、それでOK。語学留学者は、日本語で対応させられて「そんな日本語も分からないのか!」としょっちゅう怒鳴られてます。

ちゃんとしたビジネス理由の来日なので、ぶつぶつ言われながらも基本は問題なく許可が出ますが、それでも難癖つけられて、申請却下された事が一度ありました。マニラ大学卒業の、現地ではエリートのはずなんですが、まったく信用されず、卒業証書の写しを持って来いで終了。

それほど酷くない場合でも、たまにアメリカ人に付き添った時の友好的な態度とは大違い。いくらワザとやってるとはいえ、ここに並んでる外国人達は、そんな事情なんてまったく知らないんだぞ、とこちらが怒鳴り返したくなるほどヒドイと思ったものです。

結局、どうしたいのか

はあはあ、ついコーフンしました。あの頃の腹立ちがよみがえった(笑)。どうもアジア人に対する上から目線ってのは、理由の如何を問わず、役人の伝統なんじゃないでしょうかね。

しかし話戻って、日本は外国からやってくる労働者にどうして欲しいのか。日本語が壁になっているなら、この先の展望は決して明るくはないように思えますが。それでも日本で仕事をしたがっている人は掃いて捨てるほど多いと見越しているのか。それとも、ホントは外国人労働者なんて受け入れたくないのか。

これが企業なら、楽天ユニクロみたく社内英語化で海外の優秀な人材を呼び込む手もあるけど、看護師の相手はふつうのじいちゃんばあちゃんだから、いきなり英語話されてもなあ。

まあ日本国内でももっと英語が流通するようになればいいんだよ、と極論すれば思うのだけど、そういう事を言うと「キーッ!」となる人が少なくないらしいので、今は言いませんけど。

もしくは、日本の労働市場をもっと魅力的にして、日本語の壁をクリアしてでも日本で働きたいと思わせるインセンティブを設定できるか。

どっちもダメなら、あんまり外国人による労働力は期待できないよねえ。みんな言葉が通じて酷使されない労働市場に流れちゃうよ。