もし「アンコール」が起こらなかったら?

例えばバンドのワンマンライブで、最後の曲が歌い終わる。ボーカルが観客に向かって、「最高の夜をありがとう」的なことを言う。メンバーみんなでおじぎをし、大拍手の中はけていく。静かになったあと、観客はそろそろかなという空気を感じて、アンコールの拍手を起こす。

……という、ライブでよくある流れ。アンコールは必ず起こるものとして、観客は心の準備を、アーティストや運営側は物理的な準備をしている。観客は滞りなくライブが進行するよう、よきところでアンコールを起こす。

でも万が一ということが考えられる。観客の行動次第では、運営側は準備してるのにアンコールが起こらないという、まさかの状況が。
そんなとき、運営側はどうするんだろう。大小さまざまなライブの運営に携わってきた音楽プロダクションの方に、話を伺った。

いま一般的なライブのあり方として、もっとも予定調和的で唾棄すべきだと思うのが、初めからアンコールありき、な態度です。やる側も観る側も。

芝居のカーテンコールとかは良いと思うの。そもそも、アンコールとは趣が違うと思うし。

仕込まれたアンコールについては、特にやる側は、そんな予定調和をカッコ悪いと思わないのかな?ましてや、選曲的に、そのショウのウリの部分を初めからアンコールとして演出に組み込むなんてのは、誠意に欠ける所業と思うのだが。

クライマックスは初めから本編の中に入れておくべきで、アンコールは、あくまでそのショウに対する賞賛に答えるオマケではないのか。


ましてやアマチュアでアンコール前提な方々も、たまにいらっしゃる。ライブハウスのパッケージなんか1バンド40分ぐらいしかないんだから、持ち時間で完全燃焼しないでどうするよ(笑)。

そんな訳で、私はアマチュアだけど、自分達のライブでアンコール前提でセットを考えることには、常に反発し続けております。メンバーのみなさん、面倒くさいヤツで済みません(笑)。

もし終演後にアンコールがかかったら、もし時間の余裕があれば(特にアマチュアパッケージではレアだと思うけど)、そしたら別の手持ち曲か、ソレがなければ、その日の曲をなにかもう一度やればいい。アンコールって元々そういうものでしょ?アンコールで同じ曲やって怒るやつ居るの?というか、それはヘンだぞ。くされたシステムに洗脳済み。

ああ、そういえば江口寿史ネタにあったね、そういうの。武道館でのマンガライブ。アンコールで同じネタ出してブーイング、ってやつ。ミュージシャンなら喜ばれるのにーと(笑)。


観る側だって、アンコールありきなシステムに慣れきっていて、緊張感がない。アンコール拍手の間、何もしてない人多いでしょ?どうせアンコールあるんだから、ちょっと一休みと思っているのか。アンコールかけないなら帰れよ、ぐらいな感じよ。

そんな時、このままアンコールなしで客電付けて終わらせちゃえ!と思うこともあり。いや、初めから演出に組み込まれているので、目玉曲がアンコールに目白押し、なんて事が多いので、やってもらわないとコチラも痛いんだけどね。


有名な所だと、コステロが初来日の時にアンコールしないで客が怒ったという話があるけど、でもあの頃、そんなコステロがキミ達は好きだったんじゃないの?と思ったものだと遠い目。私はカッコいいーー!と思ったけどな。


ところで、明らかにアンコールが予定されていたのに、なぜか拍手が起きず、そのまま終わってしまったというケースに遭遇したことがあるです。それは1990年の新田恵利引退コンサート@中野サンプラザ。バリバリのおニャン子ファンでしたからね、私は。

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引退コンサートという性質からして、いかにそれが異様な事態であったことがご理解いただけるかと。明らかにアンコールにはヒットメドレーがあったはずなんだけど。私は、やっと手に入れた2階の最後列で、一体何が起こったのか?!と呆然としたよ。

でも、別の見方をすれば、だからクライマックスは本編に入れておかないと足元すくわれる、って事でもあるんだよね。