四畳半神話大系

何かでたまたま読んだ2007年本屋大賞の選考結果がきっかけで、「夜は短し歩けよ乙女」(森見登美彦角川書店)という本を購入したのが3年前。中村佑介のイラスト(アジカンのジャケットとか大好き)が印象的な装丁で、期待値が高まったのですが、なぜか読む前から本の山に埋もれて行方不明に。そのまま2年ほど経ってしまいました(笑)。

発掘された同書を読むと、これがなんともステキなお話で、この2年のロスがなんとも口惜しいとの思いに駆られ、手当たり次第にその他の森見作品を読む事と相成った次第。その中でもっともお気に入りとなったのが四畳半神話大系

四畳半神話大系 (角川文庫)

四畳半神話大系 (角川文庫)

をを、表紙が中村佑介のイラストに変わったね!私の手持ち表紙はこんなやつ。

ちょうど同じ頃に「鴨川ホルモー」と周辺作品を読んだのですが、森見登美彦万城目学という京大出身の作家が京大周辺を舞台にした作品群を一気に読んで、妙に界隈の地理関係や趣が頭の中に刷り込まれたような気分になったものです。

一体どんな作品なのか。文庫版の解説にナイスな文章があったので引用。

重厚かつ尊大に語りながらも正直なしっぽを隠しきれない語り手をはじめ、登場人物はいずれも魅力的である。悪友「小津」は無意味な悪の権化となって「私」のまわりをちょこまかと跳ね、理知的な風貌をした黒髪の女性の「明石さん」は遠くから「私」の男心を刺し貫き、「私」の部屋の真上では仙人のような「樋口師匠」が哲学的な能書きを添えて闇鍋を催し、酒豪で美女の「羽貫さん」は酔って男の顔を舐め始める。そうした人々に囲まれながら語り手は京都の町を彷徨し、鴨川の河川敷に並んだ恋人たちに呪いをかけ、妄想から生まれたようなタワシを探し、院生なのに学部のサークルから足を抜かない「城ヶ崎氏」にはひどく手間のかかった仕返しをたくらみ、絶品であるという猫ラーメンをうまそうに食べ、魚肉ハンバーグをまずそうに焼き、ラブドールの「香織さん」の夢見るような瞳を見つめ、スポンジで出来たクマのぬいぐるみをもみしだく。傍から見る限りでは疑いようもなく無意味で楽しい毎日であり、「小津」が語り手に問いかけたのと同様に、いったい何が不満なのかと質したくなるが、「私」は目の前にぶら下げられた現実を拒み、あり得たはずの「薔薇色のキャンパスライフ」を夢想する。

佐藤哲也(角川文庫「四畳半神話大系」解説より)

話をさら興味深くしているのは作品の構成です。本書は四話の短編から成り、それぞれがパラレルワールド的な展開をみせています。このような混沌とした面白さを、上記の解説はうまく表しているなあと(笑)。

さてその「四畳半神話大系」が、アニメになりましたよ。やってくれるぜのノイタミナ。「夜は短し歩けよ乙女」の表紙そのままに、中村佑介がキャラクターデザインを担当というのもうれし。中村佑介つながりか、オープニング曲はアジカンで「迷子犬と雨のビート」。エンディングの「神様のいうとおり」はめっちゃYMOだねと思ったら、カルトキングの砂原良徳

本編もこんな感じで「ドトウのモノローグ」が楽しめます。声優さんは大変だ(笑)。