ジンジンでミートソースを

新宿は紀伊國屋書店の地下にあるスパゲッティ屋、ジンジン。この店を使い始めたのは70年代の後半、まだ高校生の頃でした。ふと気がつくとあれから30年近く経ってしまいましたが、今でも新宿でちょっと何か食べようという時には足が向きます*1。若い頃は「毎日スパゲッティが食べられる」と思ってスパゲッティ屋でバイトしていたような私ですが、ジンジンは今でもお気に入りのスパゲッティ屋です。

今ではメニューもかなり変わってしまいましたが、今でも何回かに一回は必ずオーダーするのがミートソース。当時は260円でした。安い!これは当時の相場でもかなり安かったですよ。その辺が高校生が通うことが出来た要因でもあります*2

メニューだけでなく、その頃はお店の場所も違いました。今のジンジンの向かい、地下鉄通路からエスカレーターに乗って突き当たりにあるカレー屋「ニューながい」のある場所に、旧ジンジンはありました。カウンター1列だけの店(いや、広くなったとはいえ、今でもジンジンはカウンター1列だけだった)。

で、ミートソースなんですが、昔から変わらず、これが大好きで。他のお店と比べても、今でもたぶん一番好きなスパゲッティ・ミートソースです。ここの茹で上げのスパゲッティは他店よりもちょっと塩味が強いように思うのですが、それが甘すぎないソースに良く合うんじゃないかと。使用しているスパゲッティ自体も変わってるかもしれませんが、生パスタ*3を茹で上げるというスタイルは昔からだったと記憶してます。

「壁の穴」などの特別な店は別として、思い返せば70年代はまだろくなスパゲッティ屋がありませんでした。大体、スパゲッティといえばほぼナポリタンかちょっとオシャレにミートソースとかって時代です。そんな中で、茹でたてのスパゲッティを出してくれるジンジンは貴重でしたね。あ、ソニービルにはすでに「あるでん亭」があったかなあ?

ヨーロッパ退屈日記 (新潮文庫)あと、このお店にお世話になったと思っているのが、高校時代から安いのをいい事に多用して、ちゃんとしたスパゲッティの食べ方、ってやつを頻繁に練習することが出来たと云う部分があったなあと(恩)。きっかけは伊丹十三の「ヨーロッパ退屈日記」を読んだことで、この本自体がかなり面白いのだけど、その中に、日本人が思っている以上にスパゲッティを音を立てて食べるのは嫌われるのだと訴え、スパゲッティの正しい食べ方*4を説明している文章があって、それをひたすら練習・実践しておりました。

こういうのはやはり数をこなしてナンボだろうという事もあったでしょうが、やはりジンジンのスパゲッティが安くておいしかったから出来たことだなあ。周りの人がズルズルとスパゲッティを食べる70年代において、すでにフォークでクルクルと一口大にまとめてスパゲッティを食べる高校生。なんかヤな奴っぽい(笑)*5

*1:あの頃は丸の内線で通学していたため、帰りにちょっと買い物したり何か食べたりというときは、もっぱら新宿界隈を利用しておりました。なので新宿には当時からよく通っていたお店がいくつかあります。ジンジンもそのひとつ。

*2:今は530円。まあ安いといえば安いですね。質を考えたらかなり好コストパフォーマンスだと思いますよ。

*3:しかし、スパゲッティのことをパスタと呼ぶのがおしゃれだと思っている風潮はどうしたものか(笑)。確かにパスタの一種だけど、マイナー派ではないのかな?日本国では他にあまりパスタ料理を見かけないからだと思うけど、NYCでよく見るような「パスタメニュー」はむしろ日本人向けで、かなり人気が取れると思うのだけど。ビジネスチャンス?!

*4:いま手元にオリジナルテキストがないのだけれど、お皿の上に小さなスペースをつくり、スパゲッティをちょっとひっかけて、フォークを立てて先っぽをお皿につけたままくるくる回す、というもの

*5:でも、我が日本国においては全般的にそのような食べ方が前提とされていないせいか、「正しい」やり方では食べにくいつくりになっているスパゲッティは多いです(笑)。