スープカレー

なんでも昨今は札幌発のスープカレーブームらしいと。札幌発?!私はてっきり南インド風のカレーがいよいよ市民権を得てきて、ついに日本国民のカレー意識が広がる時が来た(笑)と気色ばんでいたんですが、何のことはない、世間ではとってもドメスティックな新潮流として受け止められていたのね。

30年前ならいざ知らず*1、今では多くの日本人はインドのカレーと日本のカレーは別物と考えているんじゃないかと思います。それでもカレーは日本で生まれた、などと言う人はいないと思うのですが、なぜひとりスープカレーのみは札幌生まれということになるのか。ヘンだなあ、という違和感がなくなりません(笑)。

そもそも、スープカレーって何だ?って話もあると思います。たぶん人によって案外思うところが違うんじゃないかという気がするんですが。

単純にサラサラなスープ状のカレーである、という見方をすれば、やはりそれは元々インド(だけじゃないけど)のカレーにあるスタイルだし、日本でも、というか東京しか知らないけど、何十年も前からそういうカレーを出している店はあるという事になります。本格派(?)では上野のデリーしかり、庶民派では新宿のモンスナックしかり。私が愛したアジア会館のバングラカレーはいつから提供されていたのかは知りませんが。

いやそうではなく、むしろ具の形状や独自のスープに価値があるのだ、という声も当然あるでしょう。この点に関しては、確かにそうかもなあ、と思うこともあります。たとえばスープカレーの人気店、マジックスパイスのカレーなどは、私が昔から知っているスープ状のカレーとは大いに違う、明らかに別物といえましょう。

今から思い返すと、1年ほど前に高円寺に登場してあっという間に撤退した、このページでも触れたことがある井津野屋のスープカレーはかなりマジスパの模倣が入っていたなあ、などと思うわけですが、なるほど独自の魅力がある料理だと思います。でもそれ以外のスープカレーを標榜する店は、私の知る限りでは、やはり昔からのカレーの範囲内ではないかなあ?好きな店*2もいくつかありますが、それは別として。

個人的には自分が美味しい物を食べられればそれでいいので、世間の人がスープカレーは札幌発云々すること自体は実はどうでもいいことなんですけど、私はせっかくだからこの機会に、そもそもインド方面のカレーにもそういうスタイルがあるという事に気づいてもらい、あわよくば好きになってもらえれば、今までにないインドカレー的マーケットが出現して*3その手の料理を食べる機会も大いに増えるだろうし、それは嬉しいことだなあと思う訳です。

最近、ゆっくりではあるものの、その手の店が増えたり、昔からあるインド料理屋が南インド風料理も手がけるようになったりという傾向があるので、より追い風になるような形でスープカレーのブームが広がってくれると良いなあ。


話はイキナリ変わって(笑)。いま私の生活圏は高円寺南界隈という事になるのですが、以前2ちゃんの高円寺グルメスレの過去ログを読んでいて、ニャンキーズというスープ状のカレーを食べさせる店があったと知りました。名前がイカシてるばかりか、ずいぶん変わった店主&店であったようですが、店主は上野のデリーを心の師匠としていたそうで、私の期待値は跳ね上りまくったのですが、割と最近閉店してしまったそうで。閉店時に百万円でレシピをヤフオクに出したなんて話も出てましたがホントかな。それにしてもニャンキーズよ、私が来るまで待っていて欲しかったよ。

*1:これは「包丁人味平」を念頭においた距離感です。あの作品の中での当時の一般的感覚としてのカレーという料理の位置づけには、情報の少なさから来る全世界的な共通性への信頼があると感じるのは私だけではないと思います。

*2:実は元祖スープカレーを標榜するアジャンタで食べてみたいんですが、どうも東京などに出店している気配がありません。麹町にあるインド料理屋の老舗アジャンタの関連店かと思ったらまったく別の店なんだそうですが、かなり興味深いです。新橋のガネー舎がアジャンタ系統という話を読んだことがありますが、ガネー舎はかなり気に入っているので、アジャンタへの期待も膨らみます。

*3:日本にあるインド料理屋はほどんどが北インドスタイルのものです。さらに言えば、まあ元々王侯貴族が食べていたようなものなので、レストランが出すメニューとしては、必然といえば必然なのでしょう。ふつうの(どんなだ?)インド人は日頃ナンなんて食べないと思うけどなあ