Mr. Brian Wilson on SMiLE Tour

1月30・31日とブライアン・ウィルソンのスマイル・ツアーに行ってきました。いやあ耳福、耳福。

元々、ちゃんとしたビーチボーイズ・ファンというわけでもないんです。1980年にブリジストンのCM*1がきっかけでちょっとしたリバイバルがあり、その時ベスト盤を聴いていた程度。でも5年ほど前からジワジワと聴き直しはじめて今に至ってます。

そんな訳で、長い間、バンドについても通り一遍程度の情報しか持ち合わせておりませなんだが、昨年の"SMiLE"発売をきっかけに、もうちょっとこのバンドを知ろうという自分内機運が高まりつつあり、最近ではいろいろ思うところも出てきたのですが、それもそのうち書くことが出来ればと思います。

さてスマイル・ツアー。前回のペットサウンズ・ツアーと同じように、第一部・第二部・アンコールという構成でしたが、今回はアコースティック・セットからの開始という変化がありました。私は前述のように浅いファンなので知らない曲もけっこうあるのですが*2、分かる範囲で聴いた限りでは、レコードよりもコーラスを前面に出したこのスタイルはかなり新鮮でした。"Add Some Music To Your Day"なんてレコードよりも全然良いと思いましたけど。第一部後半のエレクトリック・セットへの移行も、アカペラでつないでいる間に各自ポジションにつくという手の込みよう。まさにメドレー構成のスマイル再現ツアーにふさわしい演出。

30日の中野サンプラザと31日の国際フォーラムでは、エレクトリック・セットの内容に少し違いがありました。ペットサウンズ・ツアーの時は、特に第一部の内容に大きな感銘を受けたので、こういう部分は意外とはずせません。今回驚きだったのは、"Dance, Dance, Dance"や"I Get Around"などのノリノリな曲がここで出てきたことかしら。てっきり最後のロックンロール大会予定曲かと(笑)。しかし最後はもっとハデな"Marcella"で締めくくって第一部終了。中野サンプラザではこの曲の前に「こんなのが好きなんだ」と言ってましたが、世間のイメージするナイーブで複雑なサウンドのブライアンは、実態は結構ハードなモノが好きなんですかねえ。

ところで31日の国際フォーラムでは、席のせいで音がライン録りのようなクリアさで聴こえることに気がついたので、この機会を逃してはならずと、休憩時間はアルコール摂取に走りました(笑)。これは以前も書いたことがありますが、飲んで音楽を聴くとかなりトリップ感が得られるタイプなので。"SMiLE"はそんな状態で聴いてみたかったと。

残念ながら短い休憩時間内でそこまでの境地に持ってゆくことは出来ませんでしたが(笑)、そんなこんなであわただしく第二部スタート。なにしろ再現モノなので、音楽の内容はさておいて。"SMiLE"は途中で2回しか演奏が止まらないので、聴く方もさることながら、演奏する方も緊張度が高いんじゃないかと思いますが、バンドのみなさんは器用に楽器を取り替えつつ演奏は粛々と続いてゆくのでした。

それにしてもこのバンドの演奏力の高さときたら。ブライマニアな友人Yの説明によれば、ブライアン・マニアが集まってセッションしてたら本人も来た、みたいな架空楽団*3のようなバンド、という話でしたが、なるほど気合の程が良く伝わる話です。オリジナルへのリスペクトの高さに裏打ちされた再現度の高さ。おまけに技量も高いというのだから、ブライアンがツアーをやろうという気になるのも、ついにはこのメンバーで"SMiLE"を完成させようと決心したのも納得。

とにかくそんなクオリティの高い演奏で"SMiLE"のような巣晴らしい音楽を生で聴くことが出来る幸せ。クラシックなどでは「名曲を名演奏で」という事が言われることがあり、そんな言葉に反感を持っている私も、文句なく素晴らしさを認めざるを得ません。もう息を詰めて音に集中しておりました。演奏の内容は31日の方がかなりリラックスしていて良かったんじゃないでしょうか。

そうそう、すでに前回ペットサウンズの時にちょっとした驚きだったのですが、観客が音楽を聴こうと、静かに席についたまま耳を傾けている状態なんですよね、ブライアンのライブは。ポップ・ミュージックのライブとしてはかなり珍しいんじゃないか、と思うのですが、私は本来はこうあって欲しいなあと思っている*4方なので感動しましたよ。

と言いながら、"Good Vibrations"のラストではついつい立ち上がって踊ってしまった訳ですが(笑)。30日はそうでもなかったんですが、31日は"Gotta keep on the lovin good vibrations"のリフレインで感動して泣きそうになっちゃった(ここにアルコールの影響が出たか?!)ので、それが爆発したって感じですか。そのままアンコールまで踊りっぱなしで、終演後は汗かきぐったりさんでした。どうでもいいけど、せっかくブライアンがロックンロールしてるんだから、みんな恥ずかしがらずにスイムぐらいやれよ、とヒソカに思ってみる(笑)。

まあぐちゃぐちゃ余計なことも書きましたが、とにかくみん史上一、二を争う素晴らしいライブでございました。ちなみに中野サンプラザでは、混み混みでグッズ購入が難しいと判断し翌日購入を決めこみましたが、いざ国際フォーラムでは買おうと思っていたTシャツは売切れ、パンフも休憩時間には売切れてました。結局何も買えず(笑)。

*1:曲は"I Get Around"でしたが、当時はそれがビーチボーイズの曲とは思いもよらず、どこかのバンドの新曲だと思ってました。

*2:あれだけの膨大なコレクションのうち、持っているアルバムはまだ10枚程度です。

*3:20年以上の歴史を持つムーンライダーズあがた森魚コピーバンド。最近のライブではコピー元本人たちのゲスト参加がある。

*4:そうでなければ、踊りまくるか。ただぼんやり立たれるのは、座ってじっくり楽しみたい身としてはジャマだなあ。踊りたい人が立つのは気にならないのだけど。いつからライブではぼんやり立つのが盛り上がってる証みたいになってしまったのか。結局ただ突っ立ってるだけ、せいぜい手拍子では内容が伴ってないただの予定調和ではないのかねえ。