アマデウス・ディレクターズ・カットがやってくる Ja! Ja! Ja!

高校2年の時、杉並混声合唱団でモーツァルトハ短調ミサをやったことで、一気にモーツルティアンになりました。

モーツァルトの作品では、圧倒的にオペラが好きです。これこそモーツァルトの一番オイシイ部分だと思うのですが、どうも日本のクラシックファンはあまり声楽物を聞かない・評価しない傾向があるので、まだまだその魅力が広く認知されているとはいえない状況でしょう。

(一方ではヴェルディワーグナーなどを好むような一般的オペラファンにも、モーツァルトは古くてシンプルすぎ、という扱いになっているような感じを受けます。)

ところが80年代半ば、そんな状況を変えたかもしれないチャンスがありました。映画「アマデウス」です。

この映画の功績は、まずなんといってはモーツァルトの音楽や人間を現在のポップミュージックのソレのようにわかりやすい形で提示してくれた事ではないでしょうか。

たとえばモーツァルト本人がきわめてカジュアル、どころかオースティン・パワーズ並みのお下劣キャラとしてかかれていたり。
一部のクラシックファンはイヤな顔してましたが。(笑)

長さで敬遠されがちなオペラなども舞台シーンは長くなりすぎず、また今ならCGで再現するのかもしれませんが、国宝級の当時の宮廷歌劇場に莫大な保険をかけて、ろうそくの明かりだけで舞台を再現。

日頃オペラに親しみのない人でも、ゴージャスで美味しいところをつまみ食い感覚で楽しめる良い作りだったな、と。

しかし一方ではモーツァルトの音楽を良く知る人にはちょっとした別の楽しみ方を与えてくれるようなところもありました。

ストーリーではオペラ「ドン・ジョバンニ」が骨子に大きく絡んでいました。予備知識なしに芝居を追うだけでもおもしろい脚本でしたが、このオペラを知っている人は、それ以上にあの映画がかなりおもしろく観れたはずです。音楽もふんだんに使われていましたね。

言い換えれば、あまりセリフでは説明されない伏線が張ってあるのだけれど、ドン・ジョバンニの音楽を知っている人には意味が伝わる、というような作りになっていたように思うです。

例えば、冒頭からドン・ジョバンニの序曲が使われていますが、この映画がどんなテーマを展開をするのかをいきなり匂わせます。
しかしそんな事はセリフとしては一切説明されません。

モーツァルトの生きた古典派の時代は、普遍性を追及した時代でした。音楽も「わかりやすい」事が良い事だと思われていた時代。まだ「芸術家」というコンセプトが生まれる前の時代。

彼は「最高の音楽職人」のプライドを持ち、人々を楽しませる事をメインに考えてきました。今日手紙などの資料で、モーツァルトが目指していたのは「玄人をうならせつつ、そうでない人にも十分楽しんでもらえる」曲を提供する事であった事が述べられています。

アマデウスという映画もこれと同じような複義性を持っていたんじゃないかと思います。残念ながら思ったほどオペラの普及に貢献しなかったようですが。(笑)

さて、そのアマデウスのディレクターズ・カット版がロードショーに出ているというではありませんか。未発表部分が20分ほどもあると。
うおー。すぐにでも観に行きたいのですが、いかんせんあちこちでやっているわけではないらしいのです。混んでるのかなあ?

それにしても、いつの間にかこの映画も20年近く昔の映画になっていたんですねえ。うーん。