自主規制をする人

最近、NHKの蔵出し企画で「ふたりのビッグショー」をBSで放送していることがありますが、ウチのTVチャンネルはデフォルトがBS2になっているので、よく観る機会があるんです。うわ、これ録画したかったよ、再放送してくれないかね?と思うこともしばしば。今観てるのが再放送だって。

で、昨日は「水前寺清子中村美律子」のステージを見るともなしに流していたら、ふたりで「買物ブギ」を歌うシーンがありました。ハンドクラップも再現されてるし。やるなNHK、と一緒にハンドクラップしながら楽しく聴いていたのです。

この曲は、60年代にカーステレオの8トラックテープで聞き覚えた、子ども時代からのお気に入りで、当然オリジナル版を聴いて育った訳ですが、現在では歌詞の一部がカットされているのが有名な曲ですね。服部良一没後の全集CDボックスにもカット版が収録されているので、オリジナル音源CDはおそらく存在しないのでしょう。

カットされているのは、「わて(つんぼで)聞こえまへん」の(つんぼで)部分。ちょうど2拍分のサイズなので、そこだけ全部きれいに切り取られてます。尺的に不都合だったらどうしたんだろう?ピー!か(笑)。

(ちなみに、一番最後の「めくらのおばはん」の部分は、全面的にバッサリ切り取られて、カット版では、ないことになってます)

TVでもやはりカットされた歌詞で歌っていましたが、こう、ライブで二人の歌手が掛け合いで歌っていて、あの曲の演劇的な面白さが際立って盛りあった所に、カットされた歌詞は説明不足で、オチとして弱く、せっかくゴキゲンに聴いてたのにがっかり。

分かっちゃいるけど。正直CDでここまでがっかりしたことはないぐらいにダメでした。やはりライブの効果ってあるんだな。せっかく良いパフォーマンスだっただけに残念。

まあ有名な曲なので周知の事と思いますが、この部分は、店のおっさんに値段をたずねて返事がないので、「おっさん、おっさん!」と、問いかけがどんどん(音楽的にも)エスカレートした果てのオチなんですが、これだけ盛り上げておいて「わて聞こえまへん」だけでは意味不明でパンチ不足。「なんや、耳聞こえへんならしゃーないわ」的なオチが伝わらないよ。


しかし、これってカットしないといけないトコロなんでしょうかね?この2拍。こういうのは、その業界の中で自主規制しているのだと思うけど、手塚マンガなどでよくありますよね、こんなおことわり。

「内容の一部に、現在では不適切な表現がありますが、発表当時の時代背景を考慮して、そのまま収録しております。」

一言ことわっておいて、オリジナルを損なうことなく出版できているのに、音楽業界はそんなことも出来ないのかしら?

それとも、大手塚と服部良一笠置シズ子ずれでは、文化的な重要度が違うとか思ってるとか?!

そもそも言葉狩りみたいな対応は、差別の根本を見誤らせる、業界のお為ごかしにしか見えないから腹立たしいんだろうな。自主規制なんて言ってるけど、事なかれで適当にやってます、感がどうしてもぬぐえない。

自主規制を決めてる人は、少しはオリジナルを損なわない努力をしているのかな。歴史は変えられないのと同じように、その時代に生まれた作品も変えられない。これは重要な事です。それに考えなければならないとすれば、「不都合な」部分を隠すことではなく、オリジナルのまま残して意味を問うことではないのか。


偶然拾った、せっかくのお楽しみをフイにされて不機嫌みんでしたが、そういえばこの曲って、たしかMTVみたいな映画の映像があったよ?!と思い出し、youtubeで発見。

ストーリー性のある歌詞を活かして、ちょっとしたミュージカル仕立てになってます。映像付きなのでノーカット。こちらでオリジナルをじっくりとお楽しみください。ハンドクラップと一緒に(笑)。