ヘッドフォンで聴け

自分でもはっきり覚えていないのだけど、おそらく1980年あたりからか「音楽はヘッドフォンで聴かないと聴いた気がしない」というヤツになってました。

そのココロはこうです。録音に刻まれた、埋もれがちなパートの動きやほんの些細な音だったり、楽器の細かい動きなどをヴィヴィッドに感じたいから。より正確に音楽の要素を受け止めたい、ステレオ(とは限らないが)定位の中にちりばめられたすべての音に意識を向けたい、という欲求が出てきたから。

スピーカーで聴くと、細かい部分は埋もれて、やはり全体がひとつの塊として入ってくる感じ。例外は大音量の場合とドラッグありの場合?

で当時、なにか新譜を買ってきた時など、とりあえずテープにダビングしながら、まずスピーカーで一回聴くんですが、どうしても「仮聴き」って感覚になっちゃって。あとでヘッドフォンでじっくりテープを聴いて、やっと満たされるという。

これって、自分がアレンジを意識して音楽に接するようになったからだと、当時は思ってました。ちょうど「めざせアレンジャー!モード」に入った頃だし。まだ専攻は声楽だったけど(笑)。

あ、それもそうだけど、そもそも私は最初ミキサーを目指したんだ、そのためにまず音楽学校行ったんだ!と書きながら思い出し。まあそれは今は良いけど(笑)。


中学1年の時に初めて手に入れたステレオセット。思えば、コレが私のオーディオ的な音の趣味を作り上げた訳です。

ヘッドフォンとのお付き合いも、この時始まりました。パイオニアのSE-405。当時は高級機だった。以後15年ぐらい後にボロボロになってしまうまで、音楽鑑賞に、長じては録音やミックスに、私の相棒として活躍してくれました。明らかに私の音基準はこのステレオセットとヘッドフォンによって作られているはず。


私にとって自然な音は、基本的にフラットで少し高音持ち上げ気味、というモノなんですが、そのような特性のものが実は高い、というオーディオ買いのお約束があります。低音膨らませた迫力ありそうな方が安物っぽい(笑)。興味なかった人には、一見逆に見えるかもしれませんが。

そもそもは録音用に入手したものですが、最近の日常での愛器はこれ。

SONY 密閉型スタジオモニターヘッドホン MDR-CD900ST

SONY 密閉型スタジオモニターヘッドホン MDR-CD900ST

これ、フラットな音響特性と解像度の高さが特徴で、そのため業務用としてはデファクトスタンダードなんですが、もっぱら「あくまで録音用」であり、逆に鑑賞用には向かない、なんて言われてます。私もレコーディング用と思って買いました。

でも、結局、普通に音楽聴く時でも一番しっくりきます。なにより、とても情報量の多い音なので、いっぺんに鳴っているいろんな音を聴くのに適しています。それと音の密度も濃いかなあ。個々のパートがはっきり聞こえながらもガツンと来る感覚。

上記の通り、観賞用には向かないというのは、耳が疲れる、音が面白みに欠ける、なんて理由が挙がることが多いようですが、こういうのは、ヘッドフォンで音楽を聴く行為に何を求めているかの違いから来るんだろうなあ。

それにしても、ミックスの時など何時間もこのヘッドフォン使ってるのに、音質のせいで耳が疲れたと思ったことはないけどな。何時間も集中して聞き続けて疲れたという意識はあるけど。でもそんな時、私は耳ではなくノドに反応がでます。具体的には声がかすれて出なくなる。一声も発しないのに、長時間集中しすぎるとこうなる。なんでだろ。


通常iPodの持ち出し用としては、やはり音のフラットさで定評のあるSHUREカナル型イヤフォンを使ってますが、ホントは、MDR-CD900STを持ち歩きたいです。でもケーブルとジャックの形状があまりにも不適当なため断念してます。

最近はiPod等のポータブルプレイヤーのせいで、一般的にもヘッドフォンやイヤフォンで音楽を聴く機会が増えていると思うのだけど、もし今まであまり気づいてなかったのであれば、スピーカーで聴くのとは違う、細かい情報が散ちばめられたサウンドに意識を向けてみると面白い、かも。