ラーメンと味の慣れ

地元・荻窪はその昔ラーメンで有名な街でしたが、私はといえばそんなことにはまったく興味なしで、特に有名店に足を向けるようなこともなく*1、普通のラーメン屋で食べてました。まあラーメンへのこだわりといっても、その程度です。

というか、たかがラーメンに、なぜみなそうムキになる?!ぐらいに思っているタイプです。そこそこ安くてそこそこ美味けりゃいいじゃん、ぐらいな感じで。

そんな私にもやはり好みというものはあります。私は東京生まれの東京育ち、一時九州に在住という履歴そのまま、昔ながらの東京ラーメンを愛し、また九州のとんこつラーメン(主に熊本系。博多とは違う)に限りない愛着を持つ者ですが、故に、というべきか、最近のとんこつしょうゆ系のラーメンの氾濫には眉をひそめております。

世間が支持する最近のラーメンというのは、どうも私からすると、そんなどうでもいいラーメンがほとんどなので、ますますラーメンブーム(っていうんでしょうか?)からは身を遠ざけておこうと、まるで他人事な態度を取っております。

それにしても、人の味覚なんて、けっこう慣れとか環境によって違うよなあ、というのはすでに「包丁人味平」の時代から指摘されている事でありますね。

たとえば、世間がとんこつスープという言葉を知るよりはるか昔から桂花ラーメン*2は東京に進出しているわけですが、やはり苦労はしただろうと思うです。とりあえず「3回は食べてみてください」という店からの呼びかけはダテじゃないです。

桂花に限らず九州系のラーメンは、私が過去連れて行った人たちの事を思い返してみても、初めて食べる人にはあまりウケが良くない事がままありました。こんなに美味しいのに!と私が言ってもはじまりません。なにより自分自身が九州に引っ越して最初に食べたラーメンに大いに文句をつけたのです(当時7歳)。

包丁人味平 8 (集英社文庫(コミック版))結局、何を美味しい・美味しくないと思うかって、かなりその人の食習慣にしばられていると思うので、実はむずかしいトピックであるなあと思うです。このへんの問題に30年以上も昔に突っ込んでいた「包丁人味平」は、さすが草分けの貫禄とでもいいましょうか*3

しかし実際には味覚の基準がバラバラでも、一般的に、味に関してはなにか絶対的な価値があるかのような語られ方が多いとは思いませんか?たぶん「美味しんぼ」のせいだな(笑)。もっとも、ホントはそれが正しいのかもしれません。しかし私には判断不能

*1:子供の頃、再開発前の北口ロータリーのところにあった丸信には通い倒しましたが、これも有名店だからではなく、単に駅前のうまいラーメン屋として利用してただけです。

*2:何十年も前から新宿で営業する九州ラーメン屋。東京では熊本ラーメンとして語られるけれども、実はスタンダードな熊本ラーメンからするとかなり異質です。

*3:たとえば、東北出身の人と関西出身の人ではラーメンのスープの濃さの好みが違うのをどうするか、またどんなカレーの辛さの好みの人が食べてもおいしいカレーとは?というような事を本気で考えていた。昨今の料理漫画のように味覚における絶対性を振り回すよりも、はるかに難しく深いテーマなのではないかと私は思うです。高級料理よりも大衆料理を志向するというテーマもあるでしょうが。