クリケットの楽しみ

日本では野球の原型ということで知られるクリケットですが、実際にゲームを観たことがある人は少ないのではないでしょうか。

私が初めてクリケットのゲームを観たのは、96年に会社の研修でヨーロッパのトレーニングセンターに行った時でした。そこにはヨーロッパのいろんな国から人が集まっていましたが、フリータイムなどはラウンジのテレビでクリケット観戦で大盛り上がりでした。ちょうどその頃、ロンドンでクリケットの大きな大会があった*1らしいのですが、ああ、ヨーロッパの人たちにはクリケットは大人気だね、と。

去年インドに行ったのですが、しかしこの時は、人々がもっとクリケットに熱狂しているさまをまざまざと見せつけられる事になりました(笑)。詳細はまたそのうちにでも。

ところが、そんな私にも「クリケットって面白いじゃんか」と思い至る日がやってきました。きっかけは、ラガーンというインド映画。2002年のアカデミー賞ノミネート作品。これが評判どおり実に面白く、かつクリケットを学ぶ事が出来るというシロモノなのでした。

映画の舞台は19世紀の英国領インド。雨季になってもまだ雨は降らず、村の収穫はまったく望めない。やむなくイギリス人に免税を申し出るが、「クリケットの試合に勝ったら3年間無税、ただし負けた時は3倍の年貢を課す」と持ちかけられる。村人はクリケットってなに?状態で、試合どころの話ではないのだけれど、一人の男がそれでも挑戦に応じると答える。そんな無謀な!と村人は大反対するが、やがて一人一人と彼の熱意に突き動かされてゆく。

なにしろクリケットを知らない村人が一からスタートするストーリーなので、同じく全く分からない私たちも同じようにクリケットを知ってゆく事が出来るという按配です。しかも後半は延々とクリケットの試合シーン(笑)。いや、そこはインド映画ですから、イカしたミュージカルシーンもふんだんに登場しますよ。

そもクリケットとはどんなスポーツか。野球に明るい日本人にはかなり分かりやすいかも。詳しい説明は日本クリケット協会のページ(http://www.jca-cricket.ne.jp/index.php)にありますが、簡単に試合の流れを書いてみましょう。

基本は、ピッチャーの投げたボールをバッターが打つ、打ったら打者や走者が走って所定数のベースを踏んだら得点、というもので野球とほぼ同じですが、クリケットはこんな具合です。

  • クリケットは1チーム11人。野球のように攻撃と守備をくりかえすが、クリケットは10アウトでチェンジ。イニング数は1もしくは2。とにかく1イニングにものすごく時間がかかるので、これは試合前に協議して決める。
  • 野球でいうところのマウンドとホームベース(距離約20メートル)のところにウィケットという棒を3本立てたもの(高さ約70センチ)を置く。これがベース代わり。三角ベースならぬ二点ベース。ただし、その場所は楕円形のグラウンドの中央
  • 片方のウィケットのあたりからピッチャーが投げ、もう片方のウィケットの前でバッターが打つ。
  • ピッチャーは助走しても良いしバウンド球を投げても良い。
  • バッターは360度どこにでもボールを打つことが出来る。なのでファールはない。また何度空振りしても良い。ただし自分の後ろのウィケットを投球で倒されたら、アウト。つまりピッチャーはウィケットを倒すという攻撃をしている事にもなり、同時にバッターはそれを防ぐ守備をしている事にもなる
  • バッターが打つと、ピッチャー側のウィケットに向って走る。その間にボールでタッチされたりベースタッチされたらアウト。ただし、打った後アウトになりそうだと思ったら、わざと走らなくても良い。また、アウトになるまで何度も続けて打席に立つ
  • ピッチャー側のウィケットにはランナーがいて、バッターが打ったらホーム側のウィケットに向かって走る。つまり攻撃側の選手がベースを入れ替わる。これで1ラン(得点)。打ったボールが帰ってくるまでこれを何度も繰り返す。つまりロングヒットほど高得点が期待できる。
  • 打ったボールがフィールドの外枠を越えるとホームランのようなバウンダリー得点になる。ゴロで抜けた場合4ラン。直接飛んだ場合は6ラン。

基本的な部分ですが、こんな感じ。まあ私もまだよく分かってないので、間違ってるとこもあるかもなあ(笑)

それにしても、三振がないとか、アウトになりそうだったら走らなくていいとか、どうりで時間がかかるはずだと。映画ラグーンで見る限り、日没が近くなったら審判が「続きは明日」と宣言して翌日に持ち越してゆくという。1イニングゲームなのに3日かかってます。

あまりに時間がかかるので野球というショートバージョンが生まれたそうですが、最近は時間短縮化のために少ない人数でやったりすることもあるそうです。ともあれ、一度フルサイズで観てみたいなあ。イギリス人やインド人の熱狂振りを見ていると、案外苦にならないのかも。というか、試合中に日付が変わるのって、試合中に何度も飲み休みが入るようなモンで、観客はパブで試合を振り返ったり予想に興じたりと、かなり楽しんでるんじゃないかしら。あ、インド人はシラフ&道端で(笑)。

*1:研修後、休暇でロンドンに行った時の事。アビーロード詣でをしようと地下鉄に乗ったら妙に混雑していて、そのほとんどの人が最寄り駅のセント・ジョーンズウッドで下車するのをみて、実はアビーロードってこんなに観光客が来るところだったのか!と焦りまくるも、実はこのクリケット大会がすぐ近くのスタジアムで開催されていたためでありました。